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東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)115号 判決

原告

天谷和夫

右訴訟代理人弁護士

加藤文也

江森民夫

被告

工業技術院長飯塚幸三

右指定代理人

伊藤正髙

竹野清一

殿岡茂樹

福田利昭

石坂太一

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し、昭和五八年三月二九日付けでなした、懲戒戒告処分を取り消す。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

との判決

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、通商産業省工業技術院化学技術研究所(以下、「化技研」という。)保安環境化学部第四課主任研究官たる通商産業技官であって、一般職の職員の給与等に関する法律六条一項七号の研究職俸給表(別表七)の俸給を受ける者(以下、「研究公務員」という。)である。

2  被告は、昭和五八年三月二九日付けで、原告に対し、懲戒戒告処分をした(以下、この処分を「本件処分」という。なお、本件処分の処分書及び処分説明書は、昭和五八年三月三〇日に原告に交付された。)。

処分説明書記載された処分の理由は、別紙のとおりである。

3  しかるに、原告は、職務専念義務に反したり、職務を怠ったことはなく、仮に処分事由が存していたとしても、本件処分は、適正な手続によっていないし、被告が裁量権を濫用してなしたものであるから、いずれにせよ、違法である。

4  そこで、原告は、人事院に対し、本件処分について審査請求をしたところ、人事院は、昭和五九年五月一五日付けで、本件処分を承認するとの判定を行い、右判定書の正本は、同年六月二〇日、原告に送達された。

5  よって、原告は、被告に対し、本件処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1及び2は、いずれも認める。

2  請求原因3は争う。

3  請求原因4のうち、判定書の正本が昭和五九年六月二〇日に原告に送達されたことは不知、その余は認める。

三  抗弁

本件処分は、以下のとおり適法なものである。

1  本件処分に至る経過

(一) 原告は、昭和五七年六月一四日(以下、昭和五七年については日付の年の記載を省略する。)付けで、観光及び講演を目的として、ポーランド人民共和国(以下、「ポーランド」という。)ほか五か国に渡航する旨の、私事による海外渡航承認申請書を化技研総務部庶務課の本城係長に提出した。しかし、工業技術院では、当時、講演目的の職員の海外旅行は承認しない取扱いであったので、同係長が原告にその旨の説明をしたところ、原告は、右申請を撤回した。

(二) 原告は、改めて、六月二三日付けで、観光のみを目的として、ポーランドほか五か国に渡航する旨の私事による海外渡航承認申請書を右本城係長に提出した。

右申請書によると、渡航期間は七月二六日から八月一〇日までの一六日間、原告の年次休暇の残日数一四日のうち一三日を右期間に充てる内容となっていた。

(三) 化技研所長は、被告に対し、六月二四日付けの添書をつけて、右申請書を送付した。これに対し、工業技術院総務部人事課の担当者から、海外渡航の目的は観光に相違ない旨の原告の念書を提出するようにとの指示があり、原告は、一旦は拒否したが、化技研の藤堂次長、山本保安環境部長(以下、「山本部長」という。)、長沢総務部長(以下、「長沢部長」という。)らとの話合いを経て、七月三日、右念書を提出した。そこで、被告は、七月九日付けで原告の海外渡航申請を承認した。

(四) 原告は、七月二三日の勤務時間終了間際に、化技研所長宛の、ポーランドの依頼者から、サマーキャンプの都合上、少なくとも八月二二日まで滞在を延ばして貰えないかとの依頼を受けたので、先方の事情によっては、ポーランド滞在が延期できるようご検討下さい、との内容の要請書を山本部長の机上において、退勤した。

(五) 化技研では、原告の右要請は、その年次休暇の残日数からみて認められないとし、その旨を原告に連絡しようとしたが、原告が不在であったため、連絡がとれず、山本部長が、七月二六日に、原告の出発した後の東京の留守宅に電話し、原告の妻に原告の要請には応じられない旨の伝言を依頼した。

(六) 八月三日、ポーランドのクラクフ大学クレチュコフスキーから化技研所長宛に、原告のポーランド滞在期間を同月三〇日まで延長して貰いたい旨の要請が電報であり、これに対し、化技研所長は、同月四日、クレチュコフスキーあてに、原告の滞在期間の延長は法的規制により許可することはできない旨をテレックスで回答した。

(七) その後、原告は、海外渡航承認期間を経過しても、化技研に出勤せず、また、何らの連絡もしないまま、九月二九日に帰国し、同日午後三時ころ、化技研に出勤した。

(八) この間、化技研では、原告の妻から、原告が未だ帰国していないことを知り、化技研所長は、八月一四日、前記クレチュコフスキー気付で、原告宛に、「至急連絡をとれ。また、即刻帰国せよ。」とのテレックスを発信し、さらに、同月一八日、前記クレチュコフスキー及び原告に最初にポーランド渡航を要請した者であるクラクフ大学のドブロウォルスキー宛に、それぞれ、原告の滞在地を連絡して貰いたい旨をテレックスで照会したり、その後原告の滞在先を通じて、原告宛に至急連絡せよと打電したりしたが、このいずれに対しても、回答も連絡もなかった。

(九) 化技研の藤堂次長、長沢部長及び山本部長は、一〇月五日、原告から、原告から、承認された渡航期間を徒過し、帰国が遅れた理由、化技研と連絡をとらなかった理由等について事情聴取をした。さらに、長沢部長は、一二月二二日及び同月二三日、原告から渡航時の航空券、航空券の変更、ビザ、滞在中の経費、旅行中の全行程等について、詳しく事情聴取をした。

(一〇) 被告は、化技研所長からの右事情聴取等を踏まえた原告の欠勤状況に関する報告書に基づき、本件処分を行った。

2  原告は、国家公務員法(以下、「国公法」という。)の適用を受ける一般職の公務員であるところ、国家公務員には、それぞれ指定された職務する場所(以下、「勤務場所」という。)があり、公務出張の命令等により他の場所で勤務することが認められている以外は、原則としては、勤務時間中はその勤務場所で勤務することが義務づけられていると言うべきである。ところが、原告は、右の本件処分に至る経過からも明らかなとおり、原告は、八月一一日から九月二九日午後三時ころまで(日曜日など勤務を要しない日を除き三八日六時間)、勤務場所(化技研保安環境化学部第四課をいう。)で職務していなかったのであり、右期間、公務出張等他で勤務することが認められてもいず、職務専念義務を免除された事実もない。

したがって、原告は、八月一一日から九月二九日午後三時ころまでの間(勤務を要しない日を除き三八日六時間)、国公法一〇一条一項に定める職務専念義務に反し、右法律に違反したのであるから、被告が国公法八二条により、前一(九)の手続きを経て、その裁量権の範囲内でした本件処分は適法なものである。

四  抗弁に対する認否

1(一)  抗弁1(一)のうち、工業技術院が、当時、講演目的の海外旅行は承認しない取扱であったことは不知、その余は認める。

(二)  抗弁1(二)は認める。

(三)  抗弁1(三)は、そのうち、原告が、被告主張のような念書の提出を一旦は拒否したが、藤堂次長、山本部長、長沢部長らとの話合いを経て、七月三日、右念書を提出したこと、被告が、七月九日付けで、原告の海外渡航申請を承認したことは認め、その余は不知。

(四)  抗弁1(四)は認める。

(五)  抗弁1(五)は、そのうち、原告の妻に連絡があったことは認め、その余は不知。

(六)  抗弁1(六)及び(七)は認める。

(七)  抗弁1(八)は不知。

原告は、化技研に連絡しようとしたが、当時、ポーランドは戒厳令下にあって、外国への連絡方法が制限されていたところ、日本との時差を考慮すると、化技研に勤務時間中に連絡することは事実上不可能であった。

(八)  抗弁1(九)は、そのうち、一〇月五日の事情聴取の内容が被告主張のようなものであったとの点及び一二月の事情聴取が詳しいものであったとの点を否認し、その余は認める。

(九)  抗弁1(一〇)は、被告が本件処分を行ったことを認め、その余は不知。

2  抗弁2は争う。

五  原告の主張

1  本件の経緯は次のとおりである

(一) 化技研保安環境化学部は、「爆発及び燃料反応に係る保安等並びに環境保全に関連する業務をつかさどる」ことになっており、主任研究官は、「特定の重要な研究課題について研究並びに研究の指導及び管理を行う」こととされている。そこで、原告は、昭和四六年から、大気汚染の発生原因と測定方法を主要な研究課題の一つとして取り上げ、多くの業績をあげてきた。なかでも、大気汚染の簡易測定法の発明は、わが国の内外で高い評価を得、この簡易測定法は、わが国の公害発生地域では数多く用いられている。

そして、原告は、昭和五七年度の研究課題の一つにバルト海沿岸の大気汚染調査をもあげていた。

(二) 昭和五五年、ヨーロッパ環境教育会議に出席した東洋大学講師の杉浦公昭(以下、「杉浦講師」という。)は、その帰途、ポーランドに立ち寄り、ポーランドにおいても大気汚染が深刻化している状況を知り、ポーランドでの環境問題に関心をもっていたクラクフ大学のドブロウォルスキー教授に原告の発明した大気汚染の簡易測定法についての話をし、これを聞いたドブロウォルスキーは、杉浦講師に対し、原告をポーランドに招き講演をして貰いたい旨原告に伝えるよう依頼した。

(三) 原告は、杉浦講師から、ドブロウォルスキーの依頼を聞き、大気汚染とその簡易測定法について講演をし、以前から関心を持っていたヨーロッパの公害に関する調査をも兼ねる意味でポーランドに行くこととした。

(四) しかし、原告は、昭和五五年及び昭和五六年に、それぞれ学会で研究発表するために海外渡航の承認申請書を提出したところ、申請書の受理すらされなかったことから、ポーランド行きについて公務出張の手続きをとっても認められないと考え(本来であれば、原告が公害についての研究成果を海外で発表することはわが国の公害研究の水準を示す絶好の機会であり、また、国際親善になることから、公務出張として取り扱うのが相当な場合であった。)、やむをえず抗弁1(一)ないし(三)のような経緯で被告の海外渡航の承認を得た。

(五) 原告が、ポーランドに行く旨をドブロウォルスキーに連絡したところ折り返し、ポーランドでのサマーキャンプ(夏期学校、これを受講することによって大学の単位を取得することができる。)の講師をして貰いたい、そのため少なくとも八月二二日まではポーランドに滞在して貰いたい旨依頼してきた。そこで、原告は、抗弁1(四)のとおりの要請書を化技研所長宛に提出した(なお、原告は、山本部長に直接事情を説明するつもりであったが、山本部長が不在であったため、要請書をその机上に置くに止まった。)。原告は、招待者側からの要請があり、被告にとっても特に不都合はないので、当然に海外渡航期間の延長は認められると考えて、七月二六日、出国した。

(六) 原告は、七月二八日から八月七日までは、主としてポーランドのクラクフ大学で講義を行い、その間に再び、サマーキャンプの講師を依頼された。ポーランドの招待者らは、原告から、被告がポーランド滞在期間の延長を承認すれば、原告がサマーキャンプの講師を勤めることに何らの問題もないと聞き、被告に対し、抗弁1(六)のとおりの要請をし、この要請が認められると考えてサマーキャンプの計画を樹立した。

(七) 被告は、右要請を拒否したが、原告は、右拒否は違法であり、ポーランドの招待者の要請に応じることが原告の職務の本来の目的に資すると考えて、ポーランド滞在を延長することとし、所持していた、八月一一日の航空券をキャンセルし、同月三一日の航空券を入手するための手続きをした。

(八) 原告は、八月一一日から同月三一日までは、サマースクールの日程にしたがい、その講師をした。

当時、ポーランドが戒厳令下にあったこともあって、原告は、予定していた八月三一日の航空券を入手することができなかったので、一日も早く帰国しようとして、航空券入手の努力をしたが、九月二八日のものまで入手できなかった。そのためやむなくポーランドに滞在し続けた。

(九) その間、原告は、ポーランドのシチェチン市に滞在し、同市にある大学や同市化学会での講義、同市の依頼に基づく同市の大気汚染の調査を行い、その後は、原告の研究テーマの一つであった「分子アルビン酵素モデル」についての論文作成を行った。

なお、ポーランドでは、この間の滞在をも公用扱いとしてくれた。

(一〇) 原告の帰国後、ポーランドの環境管理保護研究所のジェルジュ・チワティーク所長及びサマーキャンプの責任者から、工業技術院、化技研及び原告宛に、それぞれ原告のポーランドでの行為を感謝する書面が送られてきた。

2  右の経緯のもとでは、原告は、以下に述べるとおり、職務専念義務を尽くしている。

(一) 国家公務員の職務専念義務の内容は、国家公務員の種類、職務の性質によって異なると解されるところ、研究公務員は、その職務の性質上、研究活動を通じて国民の利益に奉仕する義務が存するのであり、研究活動抜きにして職務専念義務の内容を考えることはできない。そして、本来、研究活動は、二四時間、自己管理の上で行われるべきものであって、勤務時間の限度内では、創造的な研究活動は発展しないし、勤務場所についても、研究の性格からして、一つの場所に固定されるものではない。

したがって、原告のような研究公務員は、その職務の性質からして、その職務を遂行するに当たっての勤務条件(勤務場所、勤務時間等)において、一般の公務員とは異なる側面を有しており、その職務専念義務の内容も右のような観点からの考察が必要である。

ちなみに、研究交流促進法は、研究公務員の職務専念義務を一部免除しているが、このことは、職務専念義務の内容を職務の性質に応じて考察する必要のあることを法自体が認めるようになってきたことを示すものと考えられる。

(二) 原告は、ポーランド滞在中に行ったことは、右経緯から明らかなとおり、その本来の職務に属するものであるから、右(一)の観点からすれば、職務専念義務に反したことにはならないというべきである。

(三) また、原告は、被告に対し、海外渡航期間の延長を要請し、ポーランドの採鉱・冶金アカデミーのクレチュコフスキー教授からも同趣旨の要請がされている。此の背景には、当時のポーランドの大気汚染の状態は深刻なものがあったので、その調査、分析には原告の研究内容が有益であり、これを多くの研究者や学生に習得させたいとのポーランド側の強い希望があった。このような場合の、海外渡航期間延長の要請は、原告の研究にとって著しい不都合があるか、化技研の業務に著しい支障を生じるとき以外は認めなければならないと解されるところ、原告は、延長されたポーランド滞在期間中に、サマースクールの講師をしながら、ポーランドの大気汚染の状態を調査しようとしていたもので、これは、昭和五七年度の原告の研究課題そのものであるから、原告の研究に支障が生ずることはなく、化技研の業務に支障が生ずることもなかった。

さらに、被告は、「国費の支弁を伴わない外国出張の取り扱いについて」という内規を定めているが、これは、「試験研究所の職員の試験研究を職務とする特殊性にかんがみて」作成されたもので、それには、「外国の大学等の在外研究機関において研究を行うため、試験研究所の職員が在外研究機関の招へいを受け、当該機関より旅費の支弁を受けて外国へ渡航する場合、当該研究内容がその職員の職務と密接な関連があり、かつ在外研究機関において研究を行うことが有効と認められるときは、必要な期間これを出張として取り扱う。」等の定めがされている。

本件のポーランド訪問の旅費は、ポーランドからは支給されていないが、これはポーランドの経済事情が極めて悪いことと、わが国の経済力からすると日本の研究機関から旅費が支給されると考えられたからであって、近時、発展途上国においては、わが国の費用において、その発展に協力してもらうことを期待している状況にあることを考慮すると、旅費の出所いかんにかかわらず、外国の大学、政府機関等から要請があった場合は、右内規に準じて処理されるべきであるから、本件においては、この点からも、原告の海外渡航期間の延長は認められ、公務出張、少なくとも、職務専念義務を免除したものとして扱われるべきものである。

以上のように、被告が原告の海外渡航期間の延長を認めなかったことは違法であって、その期間は、原告は、化技研で勤務していなくとも職務専念義務に反したことにはならない。

また、原告が九月一日以降も帰国できなかったのは、当時のポーランドの情勢のため、航空券を入手できなかったためであるから不可抗力によるものである。

3  仮に、処分事由があったとしても、被告は、本件処分をなすについて適正な手続を経ておらず、本件処分は、その点において違法がある。

すなわち、懲戒処分をなすに当たっては、原告に処分事由を告げ、弁解の機会を与えるのが適正手続の要請である。しかるに、被告は、原告から、帰国が遅れた理由を聞いたのみで、ポーランドにおける原告の具体的な行為、それに対するポーランドでの評価その原告の研究課題との関係での位置付け等については全く聞いていない。つまり、被告は原告のような、研究公務員の場合には、研究公務員としての職務を欠いたか否かが問題となるところ、被告は、そのような観点から重要な右のような点についての弁明の機会を与えていないのであるから、本件処分は、適正手続に反し、違法である。

4  また、本件の経緯、原告のポーランドでの行為内容、ポーランドから原告の行為について感謝状が届いている事実等に照らすと、本件処分は、被告が懲戒権を濫用した違法なものというべきである。

第三証拠(略)

理由

第一請求原因について

請求原因1及び2は当事者間に争いがない。

請求原因4のうち、原告が、人事院に対し、本件処分について、審査請求をし、人事院が、昭和五九年五月一五日付けで、本件処分を承認するとの判定を行ったことは当事者間に争いがなく、(証拠略)及び弁論の全趣旨によると、原告は、不服申立期間を途過することなく右の審査請求を行ったこと及び右判定書の正本は、昭和五九年六月二〇日に原告に送達され、原告は、右判定がなされたことをこれによって知ったことが認められる。

第二本件処分の適法性について

一  本件処分に至る事実経過

当事者間に争いのない事実並びに(証拠略)によれば次の各事実を認めることができる。原告本人尋問の結果及び(証拠略)中右認定に反する部分は採用しないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

1  化技研保安環境化学部は、「爆発及び燃料反応に係る保安並びに環境保全に関連する業務をつかさどる」こととなっており、その第四課は、「環境保全に関する化学技術に関する試験研究等に関する業務」を所掌し、主任研究官は、「特定の重要な研究課題について研究並びに研究の指導及び管理を行う」こととされている。そこで、原告は、昭和四六年から、大気汚染の発生原因と測定方法を主要な研究課題として取り上げてきた。そして、原告の開発した二酸化窒素や二酸化硫黄といった大気汚染物質の簡易測定法は相当な評価を得、いわゆる市民運動としての測定方法などを通じて数多く用いられるに至っている。

2  昭和五五年、第二回ヨーロッパ環境教育会議に参加した杉浦講師は、その帰途、ポーランドに立ち寄り、クラクフ大学のドブロウォルスキー助教授らに原告の関発した簡易測定法の話をし、実験をして見せた。これをきっかけに、ドブロウォルスキーは、日本に帰国した杉浦講師と右簡易測定法等に関して手紙をやりとりをしていたが、昭和五六年九月ころの手紙で、右簡易測定法等を詳しく紹介するために杉浦講師と原告にポーランドに来て貰いたいとの希望を伝えて来た。

3  杉浦講師は、昭和五六年一〇月ころ、東洋大学から昭和五七年に海外研修に行くことを認められたため、ポーランドに行くこととしたが、ドブロウォルスキーの誘いがあった上に、自身は十分には英語が話せないこともあって、原告にポーランドへ一緒に行くことを誘った。

そこで、原告は、ポーランドに行くことを予定し、そのころ化技研で開催された、昭和五七年度の研究計画策定のプレヒアリングでは、「光化学スモッグの重症被害の原因求明」のほかに、「バルト海沿岸の大気汚染調査」などをも自己の昭和五七年度の研究課題としてあげていた。もっとも、正式に決定された原告の昭和五七年度の研究課題は「光化学スモッグの重症被害の原因求明」のみであった。

4  研究公務員の海外出張は、そのための予算が乏しいこともあって、必ずしも十分には認められず、そのために、学会出席などのため、私費で海外に渡航する例もあった。

そこで、原告は、公務出張としてポーランド渡航が認められることはないと考え、私費で渡航することとし、昭和五七年六月一四日付けで、被告宛に、海外渡航承認申請書を提出した。

右申請書によると、渡航の目的は観光及び講演、渡航先(経由国を含む)はポーランドほか五か国、渡航期間は七月二八日から八月一二日までの一六日間、渡航費用は自己負担、とされていた。

なお、工業技術院は、「国費の支弁を伴わない外国出張の取扱いについて」という内規を定めている。これは、工業技術院の各試験研究所の職員の試験研究という職務の特殊性から、次の(一)、(二)の場合など八種の場合については、予算上の旅費を伴わない海外渡航についても、必要な期間これを出張として扱うこととしたものである。

(一) 外国の政府期間(ママ)、大学その他これに準ずる公共的期間(ママ)(以下「在外機関」という。)において研究を行うため、試験研究所の職員が在外機関の招へいを受け、当該機関より旅費の支弁を受けて外国に渡航する場合において、当該研究機関がその職務と密接な関連があり、かつ在外研究機関に研究を行うことが有効と認められるとき

(二) 外国の政府、条約等に基づく国際機構その他これに準ずる公共的機関より公式の招へいを受け、研究成果の発表、学識経験の開陳等のため、試験研究所の職員が当該外国政府等より旅費の支弁を受けて外国へ渡航する場合において、その職員の派遣が必要であり、かつ、その職員の属する試験研究所の業務に支障のないとき

しかし、原告は、右内規によって、又は、これに準じて出張と扱われるべきとの申出はしなかった。

5  被告は、その職員の国の用務以外の目的の海外渡航の承認については、通商産業大臣から権限を委任されており、通商産業大臣官房秘書課長の依命通知「職員が国の用務以外の目的で渡航する場合における海外渡航承認権限の委任についての運用について」によってその運用を行っていた。右依命通知によると、(一)業務の遂行に著しい支障がないこと、(二)旅行期間が年次休暇の残日数の範囲内であること、(三)渡航目的が、(1)観光、見学又は親族との面会、(2)学術、芸術、スポーツ等純粋に文化の向上等に資するもの、(3)赴任、のいずれかの場合であること、等の要件のいずれをも満たすときには承認して差し支えがないとされ、(二)、(三)等の要件については、特別事情があって、右要件に当たらないことがやむを得ないと認められる場合については通商産業大臣官房秘書課長と協議することとされていた。

そこで、化技研の担当者は、原告に渡航目的に講演が含まれていれば承認されない旨を説明したので、原告は、右の海外渡航承認申請書を撤回し、改めて、六月二二日付けで、被告に海外渡航承認申請書を提出した。この申請書によると、渡航目的は観光、渡航期間は七月二六日から八月一〇日までの一六日間で、年次休暇一三日をこれに充てる、渡航先(経由国を含む)はポーランドほか六か国、渡航費用は自己負担、となっていた。

なお、右時点での原告の年次休暇の残日数は一四日であり、渡航期間中に勤務を要しない日が三日含まれていた。

また、原告は、被告の求めに応じて、化技研所長宛に「七月二六日から八月一〇日までの旅行は観光を目的とするものであって、旅費はもとより、万一の場合があっても公務災害の適用は求めない。」との七月三日付け念書を提出した。

被告は、七月九日付けで、原告の海外渡航を申請どおり承認した。

6  原告は、右海外渡航の承認を受けて後、ドブロウォルスキーから少なくとも八月二二日まではポーランドのカミェンポモルスキーで開かれる環境問題をテーマにしたサマーキャンプ(なお、サマーキャンプは、大学の教官有志が全国の学生に呼びかけて夏期休暇中に行う学習活動である。)に参加して貰いたい旨の手紙を受け取った。なお、原告は、海外渡航の承認を得る前に、ポーランドのシェシカ助教授(右サマーキャンプの組織責任者)から、右サマーキャンプが八月一六日から八月三一日まで開催されることを知らされるとともに、これへの参加を求められていた。

そこで、原告は、七月二三日の勤務時間終了時ころ、化技研所長宛の、ドブロウォルスキーからサマーキャンプの関係上少なくとも八月二二日まで滞在を延ばして貰えないかとの依頼を受けたので、先方の事情によってはポーランド滞在が延期できるようご検討下さいという旨の要請書を山本部長の机の上において退勤した。

7  原告は、七月二六日、ポーランドに向けて出国し、七月二八日、ポーランドのクラクフに到着し、八月四日までは、クラクフに滞在し、講演、大気汚染の簡易測定法の実験、実習、見学(観光)等をしてすごした。クラクフ大学のクレチュコフスキーが化技研所長宛に原告のポーランド滞在を八月三〇日まで延長することを要請したのに対し、八月四日、化技研所長からの返信があり、その文面の詳細は判読できなかったが、右要請が受け入れられなかったことは原告にも理解できた。しかし、原告は、ドブロウォルスキーらの要請(サマーキャンプの日程は原告の参加を前提にして組まれていた。)や、杉浦講師の通訳が確保できなかったこと等を考慮して、ポーランド滞在を延長することにした。そして、原告は、そのころ、八月一一日の飛行機の予約を取り消し、改めて八月三一日の便を申し込んだ。

原告は、その後八月三〇日までは、前認定のサマーキャンプや、ポーランド社会主義学生同盟の主催の自主的学習活動に参加したりし、講演、実験、実習などを行ったほか、各種の見学、レクリエーションにも参加し、さらには、核兵器禁止を訴える集会を開いたりもした。

原告は、当時ポーランドは戒厳令下にあって飛行機の便の座席が確保しにくいという事情もあって、予定していた八月三一日の飛行機の座席が確保できず、九月初めに同月二六日の便の座席が確保できた(なお、原告は、日本出発前にハンガリー人民共和国のブダペスト経由で帰国する航空券を購入しており、その便の座席確保を依頼していただけであり、経由地の変更、他の航空会社の便を利用しての帰国については検討していない。)そこで、その間、同月一九日ころまでは、シチェチン市のシェスカ助教授のもと滞在し、講演、見学などをしてすごし、ワルシャワ滞在を経て、当初から訪問を予定していたハンガリー人民共和国のブダペストの酵素学研究所見学などをも行って、九月二九日朝帰国し、同日午後三時ころ化技研に出勤した。

八月一一日から九月二九日午後三時ころまでの間のうち、原告が化技研に出勤しなかったのは、その間の勤務を要しない日を除くと三八日と約六時間となる(ただし、土曜日も一日として数える。)。

8  原告は、出国以来化技研には何の連絡もせず、九月七日付けの原告宛の化技研所長に至急連絡せよとの化技研からの電報(シェシカ気付けで発信されたもの)を了知しても、原告の妻に化技研に連絡することを依頼していたこともあって、連絡しようともしなかった。

9  化技研では、右認定の電報のほか、八月一四日付けでクレチュコフスキー気付けで原告に、至急連絡せよ、即刻帰国せよとの電報をうつなどして、原告に連絡をとり、帰国させようとしたが、原告は、これらの電報を見ることはなかった。

10  被告は、一〇月五日、一二月二二日及び二三日の三回にわたり、長沢部長をして、原告の帰国が遅れた理由等について事情を聴取した。

なお、原告の帰国後、ポーランドのクラクフ大学採鉱冶金学部環境保護研究所長から、被告、化技研所長及び原告のそれぞれ宛に原告のポーランド訪問を感謝する旨の書状が届いた。

二  本件処分の適法性

以上の事実に照らして、本件処分の適法性について判断する。

原告は、国公法の適用を受ける公務員であるところ、公務員は、原則として、定められた勤務場所において、定められた勤務時間中、定められた内容の職務に従事することが、国公法上課された職務専念義務の基本的な内容であるというべきである。しかるに、原告は、右認定の事実によると、その勤務場所は、化技研(保安環境化学部第四課)であって、八月一一日から九月二九日午後三時ころまでの間、出張を命じられたこともなく、職務専念義務を免除されたこともないのに、ポーランドやハンガリー人民共和国に滞在して、勤務を要しない日を除き約三八日と六時間、その勤務場所で勤務しなかったということになる。

そうだとすると、原告は、右期間、国公法一〇一条一項前段に、ひいては職務上義務に違反したというべきであるから、国公法八二条二号に該当するところ、後三2及び3説示のとおり、被告が本件処分をなすについて原告主張のような手続上の違法もなく、裁量権を濫用したとも認められないから、本件処分は違法なものである。

三  原告の主張に対する判断

1(一)  原告は、研究公務員は、研究を行うという職務の特殊性から、勤務時間(自己管理の上で行われるべきものである。)、勤務場所(一つの場所に固定されるものではない。)等については、一般の公務員とは異なった取扱が必要であり、職務専念義務の内容もこのような特殊性の観点からの考察が必要であり、この観点からすると、原告は、ポーランド滞在中には本来の職務に属することを行っていたのであるから、職務を怠り、職務専念義務に反したことにはならない旨主張する。

しかし、研究公務員について、その勤務場所、勤務時間について、原告主張のような取扱を認めた法規はない。仮に、研究公務員の職務が研究という性格を有するものであることから、勤務時間や勤務場所の運用について若干の配慮が必要であるとしても、個々の研究公務員が、自ら相当と考える場所で、自らがその職務と考える内容の行為を行うことでその職務専念義務を果たしたと解する余地は全く存しない。原告の主張は、独自ものであって、原告がポーランドで行ったことが、その職務に合致するものであるかについて判断するまでもなく、採用できない。

なお、研究交流促進法は、研究公務員が科学技術に関する研究集会に参加しようとする場合に、任命権者が職務専念義務を免除しうる旨を定めているが、これも研究公務員の職務専念義務の基本的な内容が他の一般職の公務員と同じであることを前提に一定の場合に職務専念義務を、免除しうることを定めたものと解されるから、原告の主張を補強しうるものではない。

(二)  また、原告は、原告やポーランドのクレチュコフスキーからなされた原告のポーランド滞在期間を八月三〇日まで延長することを認めることを求める要請を被告が拒否したことが違法であり、その期間は、公務出張、少なくとも、職務専念義務を免除する取扱いがなされるべきであると主張する。

しかし、被告が、右要請を認めなかったことが違法であるとしても、そのことによって、右要請があった期間、原告が公務出張を命ぜられたことにも、職務専念義務を免除されたことになるわけでもないから、右主張もそれ自体失当である。

のみならず、被告が、その職員に出張を命ずるか否かは、その裁量に委ねられているのであって、単に外国のある大学の教官ないしはその大学から、その職員の派遣(滞在)を要請し、その要請の理由が、当該外国の公害の現状から当該職員の研究成果をその外国の学生らに紹介することが必要というものであって、当該職員もそれを望んでいるとしても、出張を命じなければならないものではない(このことは、公害問題の解決のための国際協力の必要性、研究についての国際交流の必要性を認めることとは全く別問題である。)。そして、原告のポーランド行きは、前認定の「国費の支弁を伴わない外国出張の取扱いについて」という工業技術院の内規が定める、出張として取り扱われる場合には、費用の負担者の要件以外の要件をも欠き(例えば、その(一)の場合については「在外機関において研究を行うため」という要件をまず欠いており、(二)の場合については、「外国の政府、条約等に基づく国際機構その他これに準ずる公共的機関から公式の招へいを受け」という要件を欠く。)、そのいずれにも当たらないし、原告が、当初より、私事渡航の承認申請をしていただけであることを考慮すると、被告が原告のポーランド滞在を出張として扱わないことに裁量権の濫用があることを窺わしめる何らの事情もない。

また、職務専念義務が免除されるのは、法律又は命令の定める場合に限られるところ、右要請によって原告がポーランドに滞在する期間その職務専念義務を免除しうる法律又は命令は存しない。

そして、前認定のとおり、八月一一日以降の原告の年次休暇の残日数が一日しかなかったのであるから、被告が、海外渡航は年次休暇の範囲内でのみ承認するとの運用基準に従って、クレチュコフスキーの右要請に応じなかったことが違法とはとうていいえない。

(三)  さらに、原告は、原告が九月一日以降ポーランドに滞在したのは、当時のポーランドの社会情勢のため帰りの航空券が入手できなかったためで、不可抗力によるものであると主張する。

しかし、前認定のとおり、原告は、八月三一日の飛行機便の予約ができることを確認しないうちに、八月一一日の便の予約を取り消しているうえ、当初航空券を購入していたブダペスト経由便の予約ができるのを待つのみで、他の便ないしは他の交通機関による帰国の可能性は検討していないのであるから、九月一日以降の欠勤も不可抗力によるものとは認め難い。なお、原告は、私事渡航をせざるをえなかったため、他の便等を利用する金銭的ゆとりがなかったと主張するが、そうであったとしても、不測の事態に十分に対応できる金銭的ゆとりがないままに、当初の予定を変更したことは、原告の責任の範囲に属することであり、これを考慮しても、九月一日以降の欠勤が不可抗力によるものとは認められない。

2  原告は、被告は、原告から十分な弁明を聞いておらず、その点において、本件処分は、適正な手続にした違法があると主張する。

しかし、国家公務員に対する懲戒処分について、懲戒の理由となる事実を告知し、これに対する弁解を聴取する手続きをとるべき旨を定めた法令の規定は存しない。したがって、このような手続をとるかどうか、とるとして、どの程度の内容について弁解を聴取するかは処分権者の裁量に委ねられているというべきである。もっとも、行政処分は、その内容が実体的に適法であるに止まらず、手続においても適正でなければならないことはいうまでもない。したがって、処分の内容が被処分者の権利等に重大な不利益をもたらし、しかも、処分理由を告知し、これに対する弁解を聞くことによって、処分の基礎となる事実の認定、処分の内容に影響を及ぼす可能性のある場合には、被処分者の権利保護のために処分に影響を及ぼす可能性のある事項について弁解を聞くことが要求されることがあるとしても、右以外の場合にまで、右のような手続をとらなければ、当該処分が違法になるとはいえない。

本件においては、原告は、化技研の長沢部長らから三回にわたり、帰国が遅れた理由等について事情を聞かれており、本件処分の理由は、要するに、原告の帰国が遅れ、その間欠勤したことなのであるから、帰国が遅れた理由を聞くことはまさに本件処分理由について弁解を聞いたことにほかならない。そして、後3説示のとおり、本件処分が重大な服務規律違反に対し戒告という軽微な処分に止まっているのであるから、原告から、ポーランドでの原告の行為内容の詳細について事情を聞いたとしても、本件処分に影響を与える可能性があったとは認められない。したがって、これを聞かなかったとしても、本件処分の手続に違法があるとはいえない。

3  原告は、本件処分は、被告がその裁量権を濫用したものであるから違法であると主張する。

しかし、前説示のとおり、本件の処分事由は、約三八日にわたる無断欠勤という極めて重大な服務規律違反であるのに対し、本件処分は、戒告という懲戒処分としては最も軽い処分に止まっているのであって、前一認定の原告が欠勤するに至った経緯をも考慮にいれると、原告主張のような事情を考慮にいれても(なお、前一7認定の原告のポーランド滞在中の行為は、前一1及び3認定の原告の職務に照すと必ずしも原告の職務に関するものとは認められない。)、裁量権を濫用したものとは認められない。

第三結論

よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 水上敏)

(別紙) 処分の理由

あなたは、昭和五七年七月二六日から同年八月一〇日までの間、ポーランド国他六ケ国へ私事による渡航及び同期間内の年次休暇の承認を得て渡航したが、上記承認期間の経過後も帰国せず、引続きポーランド国ハンガリー国に滞在した後同年九月二九日帰国し、その間三八日六時間欠勤し職務を欠いた。

このことは、国家公務員法第一〇一条第一項の規定に違反し、同法第八二条第一号及び第二号に該当すると認められるので、同法第八二条の規定により懲戒処分として戒告する。

三月一日号一〇五頁のJR東日本(神奈川・不採用)事件命令要旨「二」以下は、申立人の主張部分でした。

当該部分を次の通り訂正・お詫び申し上げます。

二 「設立委員は、職務の勤務の状況について『総合的かつ公正に判断すること』としていた。それにもかかわらず、本件対象者らが新会社の業務にふさわしい者であるか否かの判断に際しては、職員の技術の優劣、実績等をみることなく、勤務上の規律の観点だけが殊更に重視されている。」

「以上のように、国鉄当局の同人らに対する取扱いが公正なものであったかについては多分に疑問があり、さらに、前記……認定したとおり、全国の不採用者の約七〇パーセントの者が組合組織率三〇パーセントを割っていた国労組合員であったことを考えあわせると一層その感を強くせざるを得ないといわねばならない。」

「承継法人発足に当たっての要員体制に対する考え方などからみて、経営が成り立つ限り新会社は、できるだけ多くの人員を採用すべき立場にあったものと考えられる。そうである以上、基本計画における人員を下回っていた状況であったにもかかわらず、あえて採用しなかったことについては、特別な事情が必要であると考えられるが、この点について会社は疎明を行っていない。」

「上記判断したところ及び労使事情からみて、被申立人各会社が本件対象者らを採用しなかったことは、結局、同人らが国労組合員であること及び活発な組合活動をしたこと(同人らはいずれも組合役員又はその経験者である)を嫌悪し、採用手続に藉口して新会社への採用から排除したものであって、それにより、同人らは経済的及び精神的不利益を受け、また、これによって申立人組合が受けた組織的動揺も少なくないものであるから労働組合法第七条第一号及び同第三号に該当する不当労働行為と解するほかはない。」

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